帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』

読書会

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「ネガティブ・ケイパビリティ」とは

出典元:O-DAN

 『ネガティブ・ケイパビリティ』という帚木蓬生さんが出した本がありまして、ポストコロナ時代の生き方として注目されているそうで、私の知り合いの大学教員がSNSで紹介していましたので読んでみたというものでございましてですね。

 この「ケイパビリティ」というのは能力という意味で、キャパシティとか似たような単語もあるので、違いが難しいですね。

 一応、複雑な能力は「ケイパビリティ」というそうです。複雑と難しい能力というか、なんかそんな感じですけど、ネガティブとついているんですけど、後ろ向きなのかなと思うんですけど、定義をみると

どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力

性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力

といっております。

 なので、まぁ普通能力っていうのは、逆の能力だというか答えを出すというか答えの出ないものに耐える能力なので、普通の能力とは違う意味でのネガティブですね。

 表紙のタイトルのぱっと見のイメージとは違うかもしれないので注意が必要かもしれないですね。

 それでこういう能力を身につけていると、何がうれしいかというと、

対象の本質に深く迫ることができる

相手を思いやる共感に至る方法

とあります。

 著者が精神科医なのでそういうのが仕事なんですね。ただ実践するのは容易ではないんですね。ただこういう能力がこういう能力といえるんだということが教える本なんですよね。身につけ方を書いている本ではないです。

 ただ知るだけでも意味があるということでありまして。

分かりたがる脳(画一的思考)

出典元:O-DAN

 「わからない」ということをじっと耐えることが人間は苦手なのか、人間はわかっているほうが人間は気持ちがいいんですよね。

 この本では「ネガティブケイパビリティ」の例が紹介されてます。

 例えばピロリ菌の発見は長年発見されていなくて、これはアメリカが1950年代に「細菌は発見されなかった」と報告してから30年以上、胃の中には細菌はいないものだと信じられ続けてきたんですよね。

 ピロリ菌は顕微鏡で見つけられなかったという話で、逆に「ネガティブ・ケイパビリティ」を発揮しようと思ったら、普通に顕微鏡を覗いて、「ピロリ菌がない」と思って覗いてはだめだということですね。

 わからない状況のまま耐えないといけない。わかったつもりになってはいけない

 「ネガティブ・ケイパビリティ」の考え方でいうと「わかったつもり」はよくない。「ネガティブ・ケイパビリティ」というのはそういう能力です。

小説家は宙づりに耐える

出典元:O-DAN

 小説家の例もありまして、小説家ってけっこう「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要なんですよといっている。引用文を読み上げてみますと、

 小説を書くのはまさに暗闇を懐中電灯を持って歩くのと似ています。(中略)しかし道がこの先、まっすぐなのか曲がっているのか、行き止まりなのかは見当がつきません。(中略)わかるのは懐中電灯の光が及ぶ範囲だけなのです。

 (中略)起筆したときに最後がどうなっているかが、既に頭に入っているのは例外中の例外でしょう。作家はそんなことをしません。したとしたら、段取り小説になって、面白くもないはずです。

帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』朝日新聞出版

 面白い小説を書こうとするならばですけど、小説家は宙づり状態に耐える必要がある

 これはイメージとしてはわかりやすいのかなと思いました。

詩人(作家)と精神科医の共通点

出典元:O-DAN

 患者と一言でいっても色んな人がいる。診断名が同じでも性格や環境も違う。

 精神科医は患者と相談しながら自分なりに工夫して一緒に歩んでいくしかないということも述べておりまして、精神医学ってそんな感じなんだなという感じなんですけど、精神科医ってすごい仕事をしているんだなと思います。

 「ネガティブ・ケイパビリティ」について著者はこのようなことも述べてまして、

 二人で月の光の下、岸の見えない湖をボートに乗って漕ぎ進めていくようなものです。(中略)

 (中略)何事も決められない、宙ぶらりんの状態に耐えている過程で、患者さんは自分の道を見つけ、登場人物もおのずと生きる道を見つけて、小説を完結させてくれるのです。

帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』朝日新聞出版

 ネガティブ・ケイパビリティが何に役立つのかというのは、一概にはいえないということなんですけど、そのうちわかるということなんですけど、ネガティブ・ケイパビリティをはっきりしないと対象を理解できないのかなと。生きていく上でためになるなのかと思いました。

質疑応答・感想など

出典元:O-DAN

 「ネガティブ・ケイパビリティ」…。非常に面白い話だなと思いますよね。なかなかこういう答えを出さない著者の人っていないですよね。どちらかというと答えを示すようなことが多いんですけど。

 こういう議論なかなかないですよね。答えが出ない問題が世の中にはいっぱいあるんだという前提がある。人間も一人ひとり違うし、自然も複雑なシステムなので、理論とかマニュアルとかでは到底本質にたどり着けないものだという前提に立っているようですね。

 ある意味一流の科学者というのはそういうネガティブ・ケイパビリティが高いのかもしれないですね。ノーベル賞とるような人たちは何十年も研究しなきゃいけない。

 ピロリ菌はどうやって見つかったのかを逆に考えると、先入観をもたずにかなり地道にやらないといけないよというのは伝わってきましたね。

 「ネガティブ・ケイパビリティ」の考え方って、けっこう今の人たちには受け入れくいかもしれないですね。ただとても面白い本だと思います。

 これは、どうしてもわからない問題にぶち当たったときに役に立つと思いますよね。

 これってさっき読書会でした外山滋比古さんの『ことばの教養』とつながる感じがしますね。ゆっくり読む、考えるというのが、理解することに繋がるという。

 この「ネガティブ・ケイパビリティ」の本って、マニュアル本じゃないんですよね。反マニュアル本。

 確かにこれはマニュアルにできない笑

 つまり世の中はマニュアルに出来ないということを伝えている気がします。この本はですね、紫式部とかシェイクスピアとか出てくる。そうそう。ちょっとよくわからない。すべてを要約しようとしたらすべてを載せきれないっていう感じで書いています。

 結論はその、こういう能力を紹介したいんだろうなっていう。なんかそんな感じでしたね。

 ジブリも結末を考えずに作成されるそうなので、ある意味「ネガティブ・ケイパビリティ」ですね。

 作家って難しい仕事だなと感じましたけど、どうやったら面白い物語ってかけるんだろうなって、一つはそういう感じなんですね。

出典元:O-DAN

 面白い作家って最初からストーリー決めてると思っていました。

 えー、一人は、キーツさんという詩人がいたという話が載っていましたね。まぁそれは一応、昔からそういう能力を持っていた人はいたよというふうにありましたね。

 個人的にはがんばろうと思いましたけど。

 仕事でなんか変な人の窓口になったときはがんばろうと思いましたね。変な人って語弊がありますけど、困難な人っていったほうがいいかな。

 古代の哲学者で、「無知の知」といって、知らないことを知っているってありましたけど、知れば知るほど、知らないこともどんどん増えていくんですよね。

 なんかねぇそうですねぇ…えーっと大学で学問を学ぶとだんだんと何も発言できなくなったことを思い出しましたけど、なんかそういう感じ。わかったつもりじゃないことを書いていますね。

出典元:O-DAN

 すごくぐさりときますね。

 最近、結論を出さず聴きっぱなしにするっていうワークショップを受けました。

 カウンセラー主催のワークショップで毎回盛況なんですけど、コロナ禍を経験して、「ネガティブ・ケイパビリティ」みたいなの大事って思いの人が増えてるみたいです。

 仕事のメールだと「結論から言う」が鉄則なので、効率とは真逆の発想ですけど、やはり大きな仕事をするためには、すぐに結論を出さず耐える力が必要なのだなと気づきました。

 個人的にはもっとこの本は出回ってほしいなって感じですね。

 1400円くらいだし、250ページくらいしかないんで、まぁ、内容はそうですね、読みやすいといわれるとそうでもないですけど笑

 答えが知りたい人だと挫折したかもしれないですね。

 この本は、このZOOM読書会を利用して整理したという感じなんですよまさに。読書会活用術を見出した感じですね。

2022/6/14

【読書会】帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』

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