究極の二択は「最適解」で解決
『HUNTER×HUNTER』とは?
今回は漫画『HUNTER×HUNTER』3巻のシーンを考察して、「最適解」を見つけるためのアイディアを出すヒントについて紹介します。
『HUNTER×HUNTER』は、ゴンという主人公がまだ会ったことのない父親を捜しに、父の職業であったハンターになって、仲間達との絆を深めながら成長する様子を描いた冒険物語です。
1998年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)誌に連載が開始されました。
そもそも主人公たちがハンターになるためには、ハンター試験という難しい試験を受けなければなりません。
ハンター試験を受けるなかで、ゴンは仲間たちと出会って、5人の仲間と一緒に協力し合って次々と試験をクリアしていきます。
そして試験クリアまで残りあと1つ…!というところで、ゴンたち5人は究極の選択肢を迫られます。
出典元:冨樫義博『HUNTER×HUNTER』3 巻
それは「〇」が「5人で行けるが45時間はかかる道」もう1つは「×」で「3人しか行けないが3分くらいでゴールできる道」の2つです。
理想は5人で行ける道を選びたいですが、残り時間はあと1時間しかありません。
「〇」を選ぶのは、ほぼ不可能ということが分かります。
ちなみに3人しか通れない道を選ぶ場合、2人が手錠に繋がれないと扉があかないようになっています。
もちろん手錠は時間切れまで動くことはできません。
さてどうするかということです。
出典元:冨樫義博『HUNTER×HUNTER』3 巻
彼ら5人は多くの試験を一緒に乗り越えてきました。
ある程度信頼関係というのも築いているなかで、この2択は苦しい選択肢です。
「理性」か「感情」か
出典元:冨樫義博『HUNTER×HUNTER』3 巻
人は2つの選択肢で迷った場合、大きく感情を優先するか、理性を優先するかの2つに分かれます。
感情を優先する人の意見では
「やっぱりせっかくここまで来たんだから5人で通過したい」
と出ています。
理性を優先する人の意見では
「オレは×を押す。あとはどうやって3人を決めるか。もちろんオレは3人の中に入るつもりだし」
もう一人の方は
「誰も降りる気がないなら戦うしかないね」
と答えています。
夏目漱石「草枕」
このシーンを見たときに、私は夏目漱石の有名な言葉の一つを思い出しました。
これは『草枕』という本に出てくる言葉です。
智に働けば角が立つ。
情に掉させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
夏目漱石『草枕』
これは、簡単に言うと
「頭のいいところが見えすぎると嫌われる。
あまりにも情が深いとそれに流されてしまう。
また自分の意見を強く押し出すと、衝突することも多くなる。
人の世界って困難で住みにくい。」
というものです。
あの有名な人がこう話すくらいなので、何だか希望のない話ですね。
では実際あの5人は結果的にどうなったのか、というのが次のシーンです。
結果は…?
5人全員時間内に通過です…!
さて、どうやってこの5人は残りあと1時間という制限がある中で通過できたのでしょう。
A あ、これ私図書館で見ました。「5人で行けるが45時間はかかる道」の「〇」を選んで壁に穴をあけて、「×」の「3人しか行けないが3分くらいでゴールできる道」から出るんでしたよね。
正解はこちらです!
出典元:冨樫義博『HUNTER×HUNTER』3 巻
さきほど正解が出ましたが、正解は「長く困難な道」の「〇」から入って50分以内に「×」への壁を壊し「短く簡単な道」の方へ出る。
これなら5人で時間内に脱出できる。とういことです。
私はこの主人公のゴン君のように、どちらのメリットを取り入れられる人は好きですね。
頭がいいというだけではなく、人としての思いやりも大切にしているからです。
私が思う人間性のある人っていうのは、そんな誰も不幸な思いをせず、全員の利益や幸せになれるアイディアを出してそれを実行できる人です。
つまり夏目漱石の言葉を借りれば、理性と感情どちらかに偏れば必ずどこか欠陥が出る。
デメリットが生まれる。生きづらくなる。
でも主人公のゴン君は違かった。
出典元:冨樫義博『HUNTER×HUNTER』3 巻
主人公のゴン君は、理性を優先して得られるメリットの部分と感情を優先して得られるメリットの部分の両方を選んだ。
つまり時間内にゴールができるという要素と、2人を犠牲にしなくてもいいという要素のどちらも採用できる「最適解」をアイディアによって生み出したということです。
クリティカルシンキング
このようにAかBかという特定の方向から物事を見るように強制されず、いろんな方向から物事を見ることができる能力を、「クリティカルシンキング」といいます。
日本語で言うと「多角的な視点」をもっている人ということになります。
最近ではこういったいろんな方向性から物事をみることができる力というのが、近年注目されています。
それは人間関係や仕事とか自分の生き方を考えるうえで大事な視点になるからです。
あなたならどうする?
これを現実世界であてはめたらどうなるのかということで、一つ例題を考えてみました。
これをゴン君がやった「クリティカルシンキング」を使って、つまり特定の選択肢に縛られずに、いろんな方向から物事を考えてアイディアを出ということをみなさんと一緒にやっていきたいと思います。
例題です。
【例題】
株式会社Xは,長年にわたって企業AからYという商品を受注し訪問販売をしていた。
しかし,新規に生まれた企業Bは,企業Aよりも80%のコストで商品を受注することができることが分かった。
これまで信頼関係を築いていた企業Aの受注を切ってでも,20%コスト削減ができる企業Bに移行するか。
それとも従来通り企業Aと取引を続け,コストを削減せずに負担を続けてでも企業間の信頼関係を維持するか。
こういうふうに2択で問われると、つい人はその特定の選択肢だけで考えてしまいがちです。
ですが、ここでまずはどちらかの選択肢を選んだ場合に得られるメリットを考えてみたいと思います。
【企業Aと取引するメリット】
・長年にわたって取引を続けてきたため,協力関係を築きやすい。
・情報交換,信頼関係,裏切られにくいなど。
【企業Bと取引するメリット】
・企業Aと比べ企業Aの80%のコストでYという商品を受注できる。
・削減した20%を情報設備機器(パソコンなど)別の経費にあてられる
ここでみなさんに問いたいのは、企業Aと取引するメリット、企業Bと取引するメリットこの「双方のメリットを取り入れた解」あるいは「それに相当するアイディア」はないかということです。
Q ゴン君ならどうするか。
A 企業Aについてですけど、私は50代社長くらいで、企業Bは新規に参入されたということで20代30代くらいのイメージなんですよね。
だから50代くらいの社長の方を残した方がいいと思うんですよね。
私であればお歳暮とかで「パソコンをもらえないか」と交渉しますね。
20%の部分をもらえなくても、長く安定するのではないかと思います。
A 自分なら両方取引する。基本取引する相手は企業Aとするんですが。
長年の信頼関係。基本はAを使う。Aで対応できないことを、サブ的な要素でBを使う。
A 私も二社建てですね。企業Aと基本的には取引する。企業AにBの20%の話をして交渉する。20%ディスカウントするよう伝える。
1社だけ取引するとなると、何かあったときだとまずいので。あとコストが安いので。
A 私もA社をねぎるが一般的でしょうね。たとえば特許の部分をA社、B社と分業する。
Aの工程をA社。B社の工程をB社。全体でみてコストを下げるということです。
これ正解はないんですけど、双方のメリットを取り入れた解として、1つ考えられるとしたら
【最適解(例)】
・企業Aに対し、80%のコストで取引できないか交渉する
というのがあると思います。
「実は新規に参入した企業Bは、Yという商品を御社の80%のコストで取引することが可能です。
弊社では、コストの安い企業Bに取引しようという動きが出ています。
ただ、御社が80%のコストで取引できるのであれば、今後も継続して御社のYという商品を取引続けることを約束します。」と説得する。
するともしかしたら企業Aが交渉に応じてくれるかもしれない。
ほかにも
【他 最適解(例)】
・企業Aに,新規開発した株式会社Xの商品Z(20%相当分)の取引をもちかける。
・商品Yの需要の高い地域をターゲットを変え,120%の価格で販売する。
・従来の訪問販売からオンライン販売に移行し,消費者の幅を広げ利益率を上げる。
などいろいろ考えられると思います。
結論
結論をまとめます。
理性と感情は、アイディアによって両立できる。
つまり「最適な解」というのは「A」と「B」の両方のメリットを満たせるものだということです。
このゴン君の考え方を、いろんな場面で生かすことができれば、人間関係も仕事もプライベートも楽しく彩れるのではないかなと思います。
2022/03/16
「最適解」の見つけ方 ~漫画HUNTER×HUNTERの考察を通して~
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